ファンクラブ / ASIAN KUNG-FU GENERATION

最終形のその先を 前作「ソルファ」は完全に勝利のアルバムだった。下積み時代から長年積み重ねてきたアジカンのキャリアの集大成とも言える、ポップネスとバンドの肉体性が高密度で結合したサウンドと、全力で未来をつかみ取ろうと藻掻く言葉の数々。それら…

クラッシュ

眼前の真実をファンタジーとして昇華する手腕の巧みさ 昨年アカデミー賞を獲得した「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本を務めたポール・ハギスの監督デビュー作。多民族が蠢き合うL.Aを舞台に、36時間という時間の中でいくつかのエピソードが並列して同時進…

運命じゃない人

DVD

クラシックでありつつも、最前線 とある一夜を5人の登場人物の視点から追ったヒューマン・コメディ。低予算ながら、カンヌ国際映画祭でフランス作家協会賞など4賞を受賞するという快挙を成し遂げた本作だが、実際かなり良く出来ていて、見終わった後の満足度…

ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女

シリーズ化する魅力はあるのか C.S.ルイスによる全7作の傑作ファンタジー小説の第1作目を映像化。シリーズ化も念頭に入れたディズニーの一大プロジェクトであり、現段階ではパート3までの制作は決定しているという。本国イギリスでの原作の知名度は「指輪物…

Ill

次への標識か。はたまた迷い森への誘いか。 CISCO RECORDS限定で販売された元SUPERCAR、NYANTORAのナカコーによるネクスト・プロジェクトのプロモレコード。すでに完売となっており、現在では入手困難となっている。あの魔法のようなバンドを率いていたナカ…

RAM RIDER / 2006'0131 / 月見ル君想フ

音楽のある星に生まれて良かった −set list− DOOR MUSIC SECRET DANCE Sun Light Stars ワンダフルフィルム HELLO ラジオボーイ(新曲) FLOWER(新曲) マグネット(新曲) ミラーボール ユメデアエルヨ ベッドルームディスコ −e.c− SWEET DANCE FREE(新曲…

Whatever People Say I Am, That's What I'm Not / Arctic Monkeys

手法ではなく、魂と結びついたバンド 「暴れ馬のようなアルバムだ」というのが第一印象だった。前のめりのビートに腰のあるベースライン、炎上するギター・サウンド、そしてラップのようなボーカルがこれでもかと矢継ぎ早に繰り出され、乗る者を振り落とさん…

JUKE BOX / BENT FABRIC

こんなジジイに僕はなりたい 「これファットボーイの新曲?」なんて思っていたら、実は81歳(今年82歳)のジャズ・ピアニストの曲だと言うのだから驚かされる。跳ねるダンスビートとほとばしるピアノ。その無邪気なまでの奔放さは10代の少年を思い起こさせる…

キング・コング

最高にエモーショナルな映画 1933年に世界を湧かせ、後の特撮映画に多大な影響を及ぼした名作を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督がリメイク。最初に言っておこう。素晴らしい。兎に角素晴らしい。3時間もある大作にも関わらず、僕は1…

輪廻

「見せる」ではなく「語る」恐怖 「呪怨」で世間を席巻し、ハリウッド・リメイクでは自らメガホンを撮り、日本人監督としては全米興行チャート第2位を獲得するという快挙を成し遂げた清水崇監督の日本凱旋作。35年前に起こった大量殺人事件。それを元にした…

FLASH / THE HIGH-LOWS

ロックそのものになれ。 「分かり易く日本語で歌ってるけど、どうしても訳せない言葉がある。ロックンロール」とヒロトは言った。2005年夏、苗場スキー場で開催されたフジロック・フェスティバルのステージでの発言だ。恥ずかしながら、無茶苦茶感動した。結…

ハサミ男

DVD

監督との相性が圧倒的に悪かった作品 第13回メフィスト賞受賞作であり、映像化不可能とまで言われた「ハサミ男」を「人魚伝説」の鬼才・池田敏春が映像化。女子高生を狙い、殺した後に喉にハサミを突き刺すシリアルキラー「ハサミ男」。"彼"は新しい獲物、樽…

you / 倖田來未

最も健全な00年世代の行き着く先はどこなのか? 倖田來未というアーティスト名を聞いて、あなたがまず考えることは何だろうか。過激な衣装、"エロ格好いい"というキーワード、エイベックスの新しい歌姫、ギャルの新教祖。どれもが彼女を端的に表現していると…

LET'S BUILD A FIRE/ +/-

どうしようもなく美しく、それでいて狂っている。 ああ、もう+/-の新譜が出ただけでも幸せだというのに、この完成度と言ったらどうしたことだろう。もう僕に狂えと言っているのだろうか。獣になっちまえと言ってるのか。酔っぱらっているかのようにふらふら…

THE 有頂天ホテル

ディギュスタシオン・コメディ 「ラジオの時間」「みんなのいえ」に続く三谷幸喜監督作第3弾。1932年に公開され、"グランドホテル形式"と呼ばれる様式を確立した映画「グランドホテル」をモチーフにした作品。大晦日のホテルを舞台に30人近い登場人物による9…

ポビーとディンガン

もう一歩先の結末が見たかった オーストラリアに暮らす少年、アシュモルには悩みがあった。それは妹のケリーアンがポビーとディンガンという架空の友達に夢中なこと。ところがある日、ケリーアンの前からポビーとティンガンが姿を消し、心配のあまりケリーア…

Tip Taps Tip / HALCALI

現役ツンデレダンスビート 前作「音樂ノススメ」は非常に素晴らしい出来だったが、同時にギャル・ラップ・ユニットとしてやれることは全てやり尽くしてしまい、限界も感じさせたHALCALI。次は余程上手くやらないと延々と自分たちのスタイルをコピペして行く…

PORTABLE DISCO / RAM RIDER

踊れる未来へ RAM RIDERのデビューアルバムが遂に発売になったのだが、レコードショップでジャケットを見て「やられた」と思った。帯に「踊れる未来へ」というキャッチコピーが書いてあったのだ。ちくしょう。すんげえいいキャッチコピーじゃないか。RAM RID…

きみに読む物語

DVD

愛し続けるという意味 療養施設で記憶を亡くした老婆に物語を聞かせる老人。その物語とは、1940年に出会った身分違いの若い男女の恋物語だった。それは若き日の老人と老婆の姿。彼はこの物語を読み聞かせることで、彼女の記憶を取り戻そうとするのだが…。 出…

宇宙戦争

DVD

最初と最後だけ見ればいい映画 H.G.ウェルズのSF古典をスティーブン・スピルバーグが再映画化(53年に一度映画化されている)。スピルバーグが久し振りにパニックスリラーのメガホンを取ると言うことと、主演を務めるのがトム・クルーズと言うこともあり、「…

NIKKI / くるり

隣で鳴っていてくれる音楽 「Baby, I Love You」のレビューで散々語り尽くしてしまった感はあるのだが、くるりのアルバムがようやく発売となった。どえらいアルバムである。一曲一曲のクオリティが異様に高い。全曲をシングルカットしてもおかしくないほどの…

The third eye / the pillows

世界を切り拓く歌 17年目に突入し、大きくシフトチェンジをしたわけでもないのに、the pillowsの新曲を聴くと、いつも「今度はこう来たか」と思わされてしまう。聴き触りの良いストレートなギターと直球のメロディ、それと相反するかのような青さと憂鬱が同…

ハリー・ポッターと炎のゴブレット

原作の再現と見せ場をバランス良く配置した秀作 毎年恒例となったハリー・ポッター・シリーズの映画第4弾。魔法使いの少年ハリー・ポッターの成長と宿敵ヴォルデモートとの戦いを描いた長編シリーズ。100年に一回行われる「三大魔法学校対抗試合」。命の危険…

BEEF or CHICKEN / TERIYAKI BOYS

確かに豪華。だけど小さい。 RIP SLYMEのILMARI、RYO-Z、m-floのverbal、新人ラッパーのWISE、そしてNIGOで結成された五人組ラップユニットTERIYAKI BOYS。楽曲を提供するプロデューサー陣はネプチューンズのファレルを始めとして、ダフトパンク、ビースティ…

Confessions On A Dance Floor / MADONNA

56分28秒のキラーチューン 前作「アメリカン・ライフ」から2年振りにリリースされたMADONNAの新作。時にはロック調に、時にはエレクトロニカなアプローチに手を出してみたりと、時代の流れに合わせてその手法を変容させ、ポップ・クイーンの名前を欲しいまま…

Down in Albion / BabyShambles

時代錯誤なロックヒーロー 元リバティーンズのピート・ドハーティによる新バンド、BabyShamblesのデビューアルバム。プロデュースを務めるのは元クラッシュのミック・ジョーンズということもあり、初期のクラッシュを思わせるスッカスカのパンクサウンド満載…

いかれたBABY / フィッシュマンズ

時間を越える熱気 今年に入ってベストアルバムを発売し、RISING SUN ROCK FESTIVALにて実に6年振りのライヴを行い、奇跡的な復活を遂げたフィッシュマンズ。復活ツアーを前にして発売したのは7年前に赤坂ブリッツで行ったライヴ音源を収録したワンコインシン…

全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ / サンボマスター

鐘だろうがタンバリンだろうがとにかく鳴らせ! 「この国では顔が良くないバンドは売れない」という誰が言い出したか、誰も言っていないかは知らないが、いつの間にか暗黙の了解となりつつあったルールを打ち破って、一躍時の人となったサンボマスター。不細…

修羅場 / 東京事変

迷走を続ける疑似家族 椎名林檎個人としての活動の終止符を打ち、活動を開始した東京事変だが、僕はこのバンドの活動が目指す場所が全くと言っていいほど見えてこない。何も求めていないし、何かを発しようという気概もない。ただ、仕事としてポップミュージ…

エターナル・サンシャイン

DVD

許すことが愛 ミュージックビデオ界の鬼才、ミッシェル・ゴンドリーと曲者脚本家、チャーリー・カウフマンによるタッグ2作目。前作「ヒューマン・ネイチュア」の出来がイマイチだっただけに、それほど期待していなかったのだが、今回はお互いの持ち味を上手…