全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ / サンボマスター

鐘だろうがタンバリンだろうがとにかく鳴らせ!

全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
「この国では顔が良くないバンドは売れない」という誰が言い出したか、誰も言っていないかは知らないが、いつの間にか暗黙の了解となりつつあったルールを打ち破って、一躍時の人となったサンボマスター。不細工の不細工による不細工のためのロックとも言うべきマイノリティの叫ぶ愛が、遂にドラマの主題歌を獲得(あのドラマの主題歌は実質ELOだという声も多いが・笑)してしまったというのは、「流れに乗った」とはいえ快挙と言っていいものだろう。バンドの持つ性質が性質だけに、パブリシティを得すぎた彼らを取り巻く環境は著しく変わり、ファンの間でも賛否両論と言う状況であるのは想像に難くない。このままメインストリームを突っ走るのか、再びマイノリティたちの代弁者となるか。前者を取れば、今までバンドが叫んできた「愛」も「叫び」も全て偽物だったと捉える者も多いだろう。今までのようなスタイルではファンの心を捕まえ続けるのは難しいかも知れない。後者の選択を取った場合は、ファンの賛同を再び得ることが出来るが、バンドが実現してきたマイノリティの勝利という構図は崩壊し、再び負け犬の遠吠えを続けることとなる。乗るか、反るか。サンボマスターは大きな分岐点の前に立たされていた。
そんな中リリースされたのがこの新曲。名曲「月に咲く花のようになるの」を彷彿とさせるソウルフルなミドルチューン。カップリングの和田アキ子のカヴァー「あの鐘を鳴らすのはあなた」と共にダブルでタイアップがついており、まさに今の波を後押しするかたちのシングルとなっている。彼らは「乗る」方を選んだのだ。思い切った判断で勝負に出たと思う。だが、個人的にはこれで正解だと思う。不細工だろうがダサかろうが、この世は叫んだもの勝ちなのだ。コンプレックスを盾にして理屈をこねて何も行動しなければ、一生そのコンプレックスの影で暮らすしかない。人生を変えたければ、どう言われようが、どう思われようが、全身全霊をかけて勝ち取っていくしかない。歌わない豚はただの豚なのだ。事実上すっかり勝者となってしまった以上、サンボマスターは勝ち続けるしかない。叫ぶ「愛」の形を変容させて、前に進むしかないのだ。タンバンリンを叩き、鐘を打ち鳴らし、次に目覚める同士に呼びかける。ここまで来れるんだよと。ここまで来いよと。祈りと願いと覚悟を持って、サンボマスターは僕たちに問いかける。最初の一歩。大切なのはそこなのだ。