The third eye / the pillows

世界を切り拓く歌

The third eye
17年目に突入し、大きくシフトチェンジをしたわけでもないのに、the pillowsの新曲を聴くと、いつも「今度はこう来たか」と思わされてしまう。聴き触りの良いストレートなギターと直球のメロディ、それと相反するかのような青さと憂鬱が同居している尖った世界観。何者かになりたくて、でもなれなくて、くすぶり続けるしかないもどかしさや怒りを常に打ち出しつつも、山中さわおが「アウイエ」と叫べば、その全てが吹き飛ばされてしまう強烈な爽快感。この鬱屈とした感情を昇華する心地良さは他のバンドではなかなか味わえないと思う。the pillowsの曲の根底に変わらず流れ続けているのは、どんなにくそったれな状況でも、その全てをぶち壊して前に進もうという崖っぷちのポジティヴさだ。ネガティヴ故に前に進もうとする力。言葉は少し違うかも知れないが、彼らの音楽は常にハングリィだと僕は思う。
前作「ノンフィクション」から続く、2005年シングル第2弾。ギターリフや曲の構成は既に完成された様式美と化して来ているのは否めないが、10代かと疑ってしまう瑞々しさを持った完全無欠のロックンロール魂は衰えるどころか加速して、更なる未来へしっかりと突き進んでいる。何も変わっていないのに常に新鮮に感じられるのは、きっと彼らが目に見えない速さで進化し続けているからだろう。どこへ向かうのか、何を目指すのか。長いスパンの目標はthe pillowsはデビュー当時から今に至るまで、一度も持っていない。ただ「今」を変えるためだけに「今」を生きるためだけに走り続けている、常に現在進行形なバンドだ。恐ろしいのは、迷ったり立ち止まったりしないポテンシャルの高さ。今のためだけに現状をぶち壊して、その次に見えてきた壁をまたぶち壊してと彼らは一度も休んでいない。その弾丸のような直球さを鼻で笑うことはいくらでも出来るが、加速している弾丸を受け止められる勇気のある人間はいないのも事実であろう。
「第三の目」と名付けられた弾丸は、次なる世界の壁をぶち開けるために今回も迷うことなく撃ち出されている。先にあるのは勝利か挫折か。どちらかは分からないが、その壁を崩した者だけが見える景色であることだけは間違いない。