FLASH / THE HIGH-LOWS

ロックそのものになれ。

FLASH~BEST~
「分かり易く日本語で歌ってるけど、どうしても訳せない言葉がある。ロックンロール」とヒロトは言った。2005年夏、苗場スキー場で開催されたフジロック・フェスティバルのステージでの発言だ。恥ずかしながら、無茶苦茶感動した。結構いい歳になったのに、10代の少年のように感動した。THE BLUE HEARTS結成から早20年。彼らの音楽と言葉はずっと変わっていない。子供のように無邪気で分かり易い言葉にもの凄いトゲがあり、そして真実がある。あの時はまさかこの素晴らしいバンドが数ヶ月後に活動休止を発表するとは思ってもいなかった。
THE HIGH-LOWSとなってデビューしたのが1995年。丁度10年の活動を集約したベストアルバムが今作である。と言っても、ほとんどシングル曲を寄せ集めただけのベストアルバムなので、今回の活動休止に関して一区切りと言う意味合いの方が強いだろう。個人的には「名探偵コナン」の初代主題歌であり、今ではすっかり無かったことになっている「胸がドキドキ」が入っているのにちょっとやられた(8cmシングルが絶滅して、収録アルバムも無かったのでもう完全にお蔵入りだと本気で思っていたので)。だが、こうしてまとめて聴いてみると、その密度の濃さと決して色褪せることのない「青さ」のオンパレードに完全にノックアウトさせられてしまう。非常に稚拙で幼稚な言い方で悪いのだが、このバンドを伝えようとするときは幾多の表現を並べるよりも、こちらの方が分かり易いから敢えて使わせてもらうが、「本当に凄いバンド」なのだ。「スーパーソニックジェットボーイ」で「ロックがもう死んだんなら、そりゃあロックの勝手だろう」とまわりの声を一笑に伏し、3コードと8ビートを武器に、流行り廃り、シーンや評判をねじ伏せて彼らは独自のロックンロールを追求し、ぶち上げてきた。誰がロックを生かすのか、殺すのか。ロックは生きるのか、死ぬのか。そんなことは彼らにとってはほとんど関係ない。何故ならば、彼ら自身が「ロックンロール」そのものだったからだ。
活動休止に入ったことで「日本のロックがまた死んだ」と言うことは簡単だし、他に救いを求めることはいくらでも出来る。だけど、冷静になって考えて欲しい。ブランキーがいなくなっても、ミッシェルがいなくなっても、日本のロックは生き続けている。もっと言うなら、ロックなんてものは最初から生きてもいないし、これから先死ぬこともない。それでも「生きる」「死ぬ」という表現を使うなら、それはロックと向き合う人それぞれの心の問題だろう。「誰がロックを生かすのか」という答えは自分の中にある。殺したくなければ、自分がロックそのものになればいい。それだけの話なのだ。