輪廻

「見せる」ではなく「語る」恐怖

呪怨」で世間を席巻し、ハリウッド・リメイクでは自らメガホンを撮り、日本人監督としては全米興行チャート第2位を獲得するという快挙を成し遂げた清水崇監督の日本凱旋作。35年前に起こった大量殺人事件。それを元にした映画を制作するスタッフ、主演女優に襲い掛かる奇妙な現象の数々。彼らは前世という運命の呪縛から逃れることが出来るのか?
禍々しい雰囲気やショッキングな映像で絵的な怖さを追求したのが「呪怨」シリーズならば、今回のこの「輪廻」はストーリー・テリングに力点を置いた作品である。もちろん「恐怖映像」も満載なのだが、所謂「ドッキリ」的なバババン!という演出はない。全体的にはまるで怪談を語るかのように、静かに淡々とその顛末を紡いでいく。その為、序盤は物語の輪郭がぼんやりとしてどうにも捕らえ所がないが、徐々に散りばめられた要素が繋がっていき、うっすらと恐怖の全体像を浮かび上がらせる。その語り口は実に見事で、物語の裏に仕掛けられたある「トリック」にもあっさりと騙されてしまうほど鮮やかだ(しかもそのトリックが明らかになったときの真の「物語」の恐怖も、よくよく考えると後を引く上手さがある)。絵的な恐怖だけを重視しがちだったここ最近のホラー映画に比べると、確かに幾分か地味ではあるが、怪談的なものに立ち返ったところは十分評価に値する。ただ、その真相が明らかになってから後の展開がどうにも腑に落ちない。途中まで徹底して語ることに重点を置いていたのに、後半ではそれを一切放棄して、ゾンビ映画よろしく死者が大量に登場するゴリ押しな展開に急転。確かにホラー映画としてのフォーマットから考えると、こういう展開は至極ストレートではあり、必然であるとも思うのだが、それをあそこまではっきりと視覚化しなくてはいけないものだろうか。ネタバレになるのであまりはっきり書けないのだが、もっと怖く、物語を盛り上げられる「見せ方」はいくらでもあったのではないかと思う。視覚化することで逆に冷めてしまうこともあるのだ。死者よりも呪いの人形よりも、実は生きている人間が一番怖かったりする(「シャイニング」のジャック・ニコルソン然り)。そう言う意味では主演の優香の絶叫と白目はこの映画の一番の恐怖シーンかも知れない(笑)。