キング・コング

最高にエモーショナルな映画

1933年に世界を湧かせ、後の特撮映画に多大な影響を及ぼした名作を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督がリメイク。最初に言っておこう。素晴らしい。兎に角素晴らしい。3時間もある大作にも関わらず、僕は1秒たりともつまらないと思わなかったし、最後のエンパイア・ステイトビルのシーンは涙が止まらなくて大変だった。胸躍る冒険の連続と、最高にエモーショナルな物語。これぞ娯楽映画の最高峰と言わずして何と言おう。この中には、僕の愛した「映画」の全てが詰まっていると言っても過言ではない。ピーター・ジャクソンは子供の頃に「キング・コング」を観て映画監督になろうと思ったと語っているが、なるほどと思わせる愛情の深さが全編に漂っている。突如として姿を現す髑髏島の不気味な登場シーン、キング・コングの持つ凄まじいまでの躍動感とパワー、そして愛くるしい表情、島にいる獰猛な恐竜や巨大虫。どれも映像的には見慣れたものだというのに、観客はまるで自分たちが髑髏島に迷い込んだかのように物語の世界に吸い込まれ、次第にキング・コングに感情移入し、彼の最期に涙する。形のない無機質な技術だと思われがちなCGのキャラクターたちに(生身の役者と共演までしているというのに)、ここまで感情移入をさせられるのはそうそう出来ることではない。技術が進歩して既に現実と虚構の世界の区別がほとんど分からなくなってきている昨今のCGだが、それでもどこかしら違和感がぬぐい去れない作品が多くある中で、この「キング・コング」にはそう言った違和感が全くない。それはCGを物語を成立させるためだけに用いる道具として扱っているわけではなく、どうやって見せれば観客の度肝を抜けるか、心を揺さぶれるのかという、どちらかというと「特撮的」な視点で用いられているからに他ならない(「マトリックス」や「ジュラシック・パーク」の一作目だけが群を抜いて面白かったのはそう言うことだと僕は思う)。技術の進歩により、何でも映像化が可能になった現在だからこそ、基本に立ち返ることで映像作品の持つ本来の良さを最大限に引き出せたことが、この映画の成功の秘訣ではないだろうか。形のないものに命を与える。有り得ない話にリアリティを持たせる。それが映画の醍醐味だったはずだ。忘れていた大切なものを思い出させてくれてありがとう。僕はまだ映画に夢を見れる。