FLOURISH / Spiral Life

活動休止から10年目を迎えて

FLOURISH
僕の青春期において、Spiral Lifeというバンドは非常に大きな存在だ。いや、むしろ僕の青春そのものと言っても過言ではない。それまでは寝ても覚めても芝居のことばかり考えていた完全な演劇少年だった僕の心を一瞬でつかみ、一気に音楽フィールドへと誘った美しきメロディとコーラスワーク。低空飛行感溢れるクリアな音世界と、シニカルで棘のある歌詞はエヴァーグリーンなポップ・ミュージックとして高密度の完成度を誇っており、事実今聴いても全く色褪せていない。今日で永遠の活動休止から10年目を迎えるわけだが、僕は未だにあの熱に浮かされたような甘美な時間を忘れられずにいる。3枚のフルアルバムといくつかの企画盤、貪るように読んだインタビュー記事、初めて観に行ったライブ(開演前SEでTHE WHOがかかっていた)、毎週録音していたラジオ番組(ラジオで二人がかけた曲を翌日買いに走った)。そのどれもが僕の血となり肉となり、今の僕を形成している。たった3年という活動期間。残された足跡は数えるほどしかないというのに、僕たちが彼らから受けた影響はかなり大きい。いつの間にか僕も大人になって、ライターという色んなジャンルの人と出会う仕事をするようになったが、彼らの影響を受けた「子供たち」は色んなところにいて、色んな仕事をしていて、一所懸命生きている。そして僕が同じようにSpiral Lifeが好きだったことを知ると、少し懐かしむ目をしながら、決まって熱っぽく語ってくれるのだ。彼らがきっかけで出会った友人が沢山いるし、彼らが縁で結婚した人たちだっている。音楽性やバンドとしての評価で語ることはいくらだって出来る。しかしそれ以上に、世間的にはそれほど知名度のあるバンドでもなかった彼らが、10年経っても尚色褪せることなく、「チルドレン」である僕たちの世代に大きな祝福を残したというのは、バンドの力として偉大だと思うし、本当に素晴らしい二人組だった証拠ではないだろうかと思うのだ。彼らの掲げた「SOUND OF MY GENERATION」は今でも確実に僕たちの中で生き続けている。今度は、それを僕たちが鳴らす番なのだ。音楽だったり、仕事だったり、生き方だったり、形は何でもいい。そうして次の世代に伝えていくことが、僕たちが彼らに出来る最高の恩返しであり、供養でもあるように思える。柄にもなくちょっとセンチメンタルな記事を書いてしまったけど、10年目の今日だからこそ、ここに書いておかなければ自分は先には進めない気がした。お見苦しい点もあるだろうが、何卒ご了承を(笑)。

愛しています、永遠に。そしてありがとう。