Arctic Monkeys / 2006'0404 / 新木場STUDIO COAST

ロックスターの生まれる瞬間

−set list−
The View From The Afternoon
I Bet You Look Good On The Dancefloor
You Probably Couldn't See For The Light But You Were Starting Straight At Me
Perhaps Vampires Is A Bit Strong But...
From The Ritz To The Rubble
Cigarette Smoker(新曲)
When The Sun Goes Down
Red light Indicates Doors Are Secured
Still Take You Home
Dancing Shoes
Leave Before The Lights Come On(新曲)
Fake Tails Of San Francisco
A Certain Romance

凄いライヴを見てしまった。あまりのポテンシャルの高さにあちこちで反響を巻き起こしている彼らのデビューアルバムですら、このライヴの後では子供騙しだとすら思えるほどの凄まじさ。実際のところ、録音技術の進んだ現代では、それだけでバンドの真価を判断するのは昔以上に難しい。いくら下手でも荒くても、それなりに綺麗に仕上げられるため、誤魔化しはいくらでも利くからだ。それだけにアルバムを聴いた段階では、彼らの発想力とその器用さに舌を巻いたものの、ロックバンドとしては正直未熟で、演奏自体はかなり大ざっぱなものだと思っていた。だがしかしどうだろう。蓋を開けてみれば、鉄壁のようなバンドセッションの嵐。ほとんどエフェクターを通していない乾いたギターカッティングと垂直に叩きつけられるビート。自在に変化する複雑な曲を正確に鳴らし、尚かつロックンロールとしてのダイナミックさもしっかり兼ね備えている。すべてが必殺技とも言うべき強烈なインパクト。ぎっちぎちに埋め尽くされた人の波が絶えず蠢いては臨界点を迎えて弾け、また渦を巻く。ここ近年、あんなに盛り上がっているフロアを見たのは本当に久し振りだ。勝利をつかみ取ったかのように突き上げられる拳、拳、拳。絶頂とも言えるシンガロングの応酬。全てを受け入れるハンドクラップの花畑。ライヴの醍醐味とも言うべき全てのコミュニケーションを必然と起こし、抜群のコール・アンド・レスポンスで会場を支配する驚異的な吸引力。誇張でも何でもなく、何年も何年も語り継ぎたくなるような、奇跡的な煌めきに満ちあふれた素晴らしいライヴだった。これを本物のロックスターの誕生の瞬間と言わず何と言おう。何だかんだで「ブーム」で終わってしまい勝ちだった昨今の新人バンド勢だが、彼らなら「時代」を築けるのではないかと、あのライヴを見た後なら確信出来る。ロックンロールが好きで本当に良かった。
今夏「SUMMER SONIC 2006」で再度来日する彼らだが、参戦するなら絶対見ておいた方が良いと断言しよう。もう、本当に凄いから。猿万歳。