時をかける少女

間違いなくこの夏最高の映画

筒井康隆原作でこれまで何度も映像化されてきた「時をかける少女」を完全オリジナルでアニメ化したのが本作。メガホンを取ったのは「デジモンアドベンチャー」「ONE PIECE オマツリ男爵と秘密の島」などで高い評価を得てきた細田守監督(この監督、本来「ハウルの動く城」の監督を務める予定だったが、ジブリ側と折り合いがつかず降板した事でも話題になった新進気鋭のアニメーターである)。今回、初のオリジナル作品を制作、公開前にほとんど宣伝もされておらず(実際僕も試写をスルーしました。すみません)、ひっそりと上映が始まったこの「時をかける少女」だが、インターネットの口コミで人気が沸騰。現在上映されている数少ない劇場は連日立ち見が続くという大ブレイクを果たしている。あまりの好評価っぷりに気になって劇場まで足を運んだのだが、とんでもなく面白かった。すみません。試写スルーして。何度でも頭を下げます。

原作の主人公・芳山和子の姪にあたる高校生の紺野真琴が今作の主人公。ふとしたことからタイムリープの力を手にした彼女は、妹に食べられたプリンを食べたり、テストや調理実習での失敗を挽回すべくタイムリープを駆使して、日常を謳歌する。しかし、男友達の間宮千昭から突然告白された真琴は、恋に後ろ向きなためタイムリープの力でそれをなかった事にしてしまい、そこから人間関係に微妙な変化が訪れはじめる。更に、真琴が繰り返し行ってきたタイムリープにより周囲の人間にも徐々に歪みが生じ出す。真琴はそれを修正すべく、何度もタイムリープを試みるのだが、やがてそれはとんでもない事態を引き起こし…。

原作のテイストを残しつつも全く新しく生まれ変わった「時をかける少女」は、明るく前向きな主人公・紺野真琴を始めとして、スピーディで躍動感溢れる作品へと生まれ変わっている。友達のため、人のため、そして恋のために全力で走り続け、全力で笑って全力で泣く真琴は本当に魅力的だし、彼女が動かしていく物語もダイナミックな力に満ちあふれており、観客の心を掴んで離さない。タイムリープという絶大な力を手にしながらも半径10メートルの日常にしか使用せず、しかしだからこそ描ける日常的で等身大な恋と青春を最大限に描き切った脚本と演出は完璧ともいえる完成度。特に伏線や整合性の面でかなり複雑に入り組んでいるタイムリープの現象をすっきりとまとめ、巧みに伏線を紛らわせている手腕は本当に上手い。しかもその巧みさが一見分からないのが一番凄いところだ。本当の達人の技というのは目に見えるものではないのだから。完全オリジナルでありながら、最後の最後でしっかりと原作のテイストの方へ落とし込み、切なさと甘酸っぱさでほんのり泣かせる展開は爽やかな感動を残すので何度でも見たくなってしまう。同じアニメ作品である「ブレイブ・ストーリー」「ゲド戦記」と比べ評されることが多いこの作品だが、僕は洋画、邦画、アニメ映画と全てのジャンル含めて、この夏見た映画でこの「時をかける少女」が一番面白かった。ひょっとしたら今年の映画でNO,1かもしれない。

上映館が少ない事で見れな人も多いと思いますが、徐々に増えてきてはいるみたいなので、ちょっと遠出してでも是非とも見てください。絶対元が取れる作品です。あちこちのサイトで既に言われている事だとは思いますが、素晴らしい感動に出会える一本です。