木更津キャッツアイ ワールドシリーズ

有終の美を飾る完結編

2002年にテレビシリーズで登場し、視聴率はそれほど良くなかったにも関わらず、熱狂的な支持者を生み出した「木更津キャッツアイ」。翌2003年には劇場映画版「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」が公開され、後追いファンが続出するなど人気シリーズとなった本作が3年ぶりにカムバック。若年性の癌で余命半年の宣告を受けたぶっさん(岡田准一)が、残りの人生を普通に楽しく過ごすために始めた泥棒集団「木更津キャッツアイ」のメンバーの日常をオフビートな笑いで描いてきたこの作品だが、今回はそのぶっさんの死後3年経った世界が舞台。それぞれの道を生きる登場人物たちの前に、何故かぶっさんが復活して現れるという物語だ。

劇場版進出第一弾だった「日本シリーズ」はファン感謝祭という色合いが強く、最初から最後までやりたい放題で投げっぱなしなお祭りムードの様相を呈していたが、今回は完結編という意味合いもあって、いつもの笑いやノリはありつつも物語としては比較的まとまっており、泣かせどころもしっかりとある。笑わせるところでは常識破りな要素をバンバンと投下しつつも、締めるところで臭すぎる演出や科白は敢えて避ける、「木更津キャッツアイ」を始めとするクドカン作品の醍醐味とも言えるこのコントラストは今回も絶妙な味わいをみせ、観客に大きな笑いと自然体のほのかな感動を与えてくれるはずだ。とは言え、やはりこのシリーズのファンであることが前提の作りになっているので、見たことがないという人は今からでも遅くないのでテレビシリーズと前作「日本シリーズ」を絶対見ておくことをお薦めする。また、作中に過去のエピソードとリンクする箇所も当然ながらいくつか出てくるので、ファンの人ももう一度全部見直しておさらいしておくとより楽しめるはずだ。

青春期特有のバカさ加減と無鉄砲さを見せつけて駆け抜けていった「木更津キャッツアイ」だが、青春に終わりが来るように今回で完全なファイナルを迎える。しかもただ終わらせるだけでなく、何かが終わった後にどう生きていくかと言うことと向き合っていく終わり方だ。もちろんこのシリーズなので、それほどはっきり描いていないし、説教くさいわけでもない。けれど見終わった後に「ああ、このシリーズが好きで良かったな」と心から思える作品だった。そう、この作品は「木更津キャッツアイ」がファンとちゃんとバイバイするための作品なのだ。熱に浮かされたような青春期は終わりを告げ、僕らは大人になっていく。そうしていつか若かりし頃を振り返って「ああ、バカだったな」と大笑いして語りあうのだ。完結編を見た今、はっきりと分かる。「木更津キャッツアイ」はそんな青春そのもののような作品だ。今までありがとう。お疲れ様。