デジャヴ

もう少しで傑作になれたのに…。

パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジェリー・ブラッカイマートニー・スコットと実に6度目のタッグを組んだサスペンス・ミステリー。始めて来た場所なのに何故か一度来た事があるような気がする錯覚「デジャヴ(既視感)」をタイトルにしているだけに、何だか心霊的な匂いが漂っているが、そんな要素は全然なく、タイトルになっている「デジャヴ」ですら実はほとんど関係ない。なので、映画を見て「あれ? これってこんな映画だったんだ」と始めて気づかされた。そう言った予想外な部分に対してまず好き嫌いがはっきり別れる部分もあると思う。

突如として起こったフェリー爆破事故。大勢の死傷者を出したこの事件を捜査していたダグ・カーリン(デンゼル・ワシントン)は、FBIの要請で特別捜査本部に招かれる事になる。そこにあったのは現在から「4日と6時間前」を完全に再現出来る最新の監視システム。限定された地域内であればどんな場所でもあらゆる角度から再現して見る事が出来るが、早送り、巻き戻しは出来ない。リアルタイムで進行する「4日と6時間前」の映像を見ながら、彼らは爆破事件の犯人の足跡を辿ろうとするのだが…。

この映画の肝は何と言っても「4日と6時間前」を完全に再現出来る監視システムの存在とそれを駆使して捜査するという斬新な発想にあるだろう。早送り、巻き戻しが出来ないので捜査陣は「現在」と「過去」の二つの空間を体験する事になる。この微妙なタイムラグが物語の緊張感を生み出し、捜査の展開を劇的に盛り上げる。システムが持つ制限に則った「ルール」上での捜査はそれだけでかなり面白い。特に過去の映像と現在の映像が入り交じったカーチェイスはかなりの面白さ(犯人の車は深夜走っているのでガラガラの道を走って行くが、追跡する方はそれを見ながら現在の車が往来する道を猛スピードで追跡する)。実をいうと中盤辺りまでは「これすんごい傑作なんじゃないだろうか」と興奮を隠しきれなかった。しかし、後半に差し掛かり途端に失速。突如としてシステムの「あるルール」を自ら打ち破るような真似をしてしまい、それ故にかなり力技で物語を畳み掛けた印象が強い。詳しくはネタバレに抵触するので言えないのだが、折角面白いアイデアとルールを用意していたのだから、それを活かし切った上で物語を終わらせる方法を模索してもらいたかった。まあ、その後半の力技な部分に関しても序盤から準備してあった伏線の数々を奇麗に回収していてプロット的にはかなり美しかったりするのだが、やはり設定の突破に無理矢理さが否めない。その無理矢理なところがブラッカイマーだと言ってしまえばそれまでなんだが…。うーん。