the bird & the bee / the birds & the bee

無邪気でグロい少女の迷宮

The Bird and The Bee
 「レディオヘッド・ミーツ・カヒミ・カリィ」や「激甘のビョーク」なんて、簡単に言葉で言い表そうと思えばいくらでも出来るのに、そういう比喩に逃げたくない音だ。そもそもレディへとカヒミが融合したところで、お互いの個性を相殺してしまうだろうし、毒の抜けたビョークなど、最早ビョークでもなんでもない。「日本酒のコーラ割り」だとか「気の抜けたビール」みたいな、単純な足し算引き算で表現していい音楽ではない。
 メルヘンチックなバンド名が指し示す通り、サウンドそのものは60年代ガールズポップのメロディを現代風エレクトロニカで再構築した非常にファンタジックなもの。しかし、そうした表面的な柔らかさの裏に潜む刺々しさは実にパンキッシュだ。その正体はリトル・フィートローウェル・ジョージの遺児・イナラと、レッチリやベックのレコーディングへの参加や、リリー・アレンのプロデュースも担当した気鋭のジャズピアニスト・グレッグ・カースティンと聞けば合点が行くというもの。
 彼らの放つ辛辣さは、レディオヘッドが絶望したような、ビョークが母性を持ったような、そうした後天的な原因によるものではなく、少女であるが故に無邪気でグロいという、とても純粋なところに根付いている。その世界はテリー・ギリアムの映画『ローズ・イン・タイドランド』を思い起こさせる。ダークサイドのアリスが見せる夢は甘く耽美的で、それ故にハマると抜けられない。