Pepperoni Quattro / ELLEGARDEN

いい加減、目覚めなさい!

Pepperoni Quattro
何だか分からないが凄い人気らしいぞ、ELLEGARDEN。いや、ごめんなさい。「何だか分からないが」と冒頭であっさり書いてしまうくらい、僕はこのバンドの良さがほとんど分からなかったと言いますか、まあ、典型的な聴かず嫌いだったんですけど、友人に超"エルレ"狂いの女の子が居まして、まあその娘の強い勧め(それはまさに宗教の勧誘のように・笑)があって聴いてみたのです。というか、ORANGE RANGEもこのELLEGARDENも既に現在の日本のポップ、ロックシーンでは無視出来なくなってきているのは事実。大切なのはそれが良いか悪いかを判断するのではなく、存在を認めた上で何故それがシーンに台頭してきているのか、何故支持されるのかと言うこと。自分の気に食わないもの、自分には合わないものを吐き捨てて「ロックは死んだ」って言うのは簡単だけど、「ロックを殺さない」ということは非常に難しいし、エネルギーが必要だし、余程の馬鹿じゃないと出来ないと思うのです。
と言うわけで、件の"エルレ狂い"の娘から「これが一番エルレらしいですからぁ! うふっ!(満面の笑顔で)」と渡されたこのアルバムを聴いてみました。西海岸そのまんまの直球メロディアスパンクにエモが適度に加味されることでドラマティックな展開を演出。ぱっと聴けば10年くらい前に巷のライヴハウスに溢れかえっていたメロコアバンドと何も変わらない気もしますが、抑揚のつけ方、構成が非常に秀逸。はっきりとコレ!と断定出来るわけではないが、既視感溢れるメロディ(こういったメロディアスパンクの雛型的な)を切り貼りしつつも、細かいギミックを効かせてオリジナルとして聴かせてしまうのは、確かに他のバンドからは逸脱した上手さ。後、歌詞を日本語と英語でチャンポンしてますが、「この人ネイティヴなんじゃないの?」ってくらい英語上手いです。えーっと(資料に目を向けつつ)、ボーカルの細美氏。ちょっと詳しいプロフィールがないのではっきり分からないのですけど、留学経験がない独学の英語ならば、この人滅茶苦茶耳がいいのではないのでしょうか。その耳の良さがおそらく本能的にメロディを選択、構成させる、驚異的なまでの楽曲作成力を支えていると思います。
メジャーという対極の位置で中心的存在となっているORANGE RANGEと、インディーシーンから猛攻をかけるこのELLEGARDEN。彼らは根本では「楽曲の構成力の高さ」を武器にしつつも、前者は「意図的に」という狡猾さを見せ、後者は「本能的に」という貪欲さを見せつける。更に言うと、日本のロックシーン自体が既に「オリジナリティ」を大切にしているわけではなく(パクりネタには未だ敏感ですが)、サンプリングとミックスによるDJ的な文化に確実に移行していることを指し示している気がします(仮にオリジナリティがあるとすれば、それは構成力のそれでしょう)。それに乗れるか乗れないか、好きか嫌いか、目立つか目立たないかという問題。日本全体が巨大なクラブに変容していると言ってもいいのではないでしょうか(実際、音楽以外の映画や小説、アニメ、漫画もすべてDJ的な要因で成り立っていると思います)。マスメディアによる情報の淘汰とインターネットによる急速な情報過多が生み出したというべきか、「成るべくして成った」文化の最前線突撃部隊。そろそろ皆、無意識下ではそれを認め、享受しているのではないだろうか。巷の声はどうあれ、セールスがそれをしっかり証明している気もします(この"売れない"ご時世に売れるというのはそれだけで説得力がありますから)。
どうあれ、彼らは音楽に対して非常にポジティヴで、貪欲であることは確か。「ロックは死んだ」と言って現状に絶望することを赦さず、今、この時代の音として「どうサヴァイヴしていくか」と模索していくことを彼らはしっかりとシーンに突きつけている。目覚めなくてはいけないのは、恐らく僕たちの方だ。