I ♥ U/ Mr.Children

世界の中心で、愛を叫んだけもの

I LOVE U
「アイ・ラブ・ユー」なんて、シンプルでありふれた愛の言葉は今時誰も使わないし、囁かれたところで胸が熱くなることもない。すっかり使い古されて、言葉自体の価値が下がり、安っぽくなってしまったのもあるだろうけど、それ以上にとことん冷め切っている世代が僕たちなんです。ごめん、厳密に言うと「冷め切っている振り」をしている世代なんです。満たされすぎて、当たり前の言葉が何だか恥ずかしく思えてしまう。ちょっと斜に構えている方が格好良く思えてしまう。だから、こんなストレートなタイトルを見せつけられると赤面を通り越して、一瞬失笑してしまうのだ。それが時代錯誤な言葉に対してなのか、素直じゃない自分に対してなのかは分からないのだけれど。
前作から1年半を経て発表されたMr.childrenのニューアルバム。サウンド面やアルバム全体の構成に目新しさはなく、シングル曲以外は過去のアルバム曲の既視感に襲われること数回。これ以上ミスチルサウンドの発展が望めないことに苦笑してしまったが、その代わりにとばかりに詰め込まれた言葉の羅列が表面的なサウンドをより深化させることに成功している。吐き出される欲望と情熱と絶望と苦悩と喜び。全世界に向けて投げかけた大きな人間愛から、コンドームをつけないでセックスしたと歌った日常的な中出し愛(コンドームを「隔たり」と歌うなんて比喩が高等過ぎて逆に下ネタじゃん!)まで、ミクロレベルからマクロレベルの様々な愛の形が短編小説のように盛り込まれたラブ・パンドラ・ボックス。歯ぎしりのような日常に憂いつつも、すがりついた愛、つかみ取った愛、手を差し伸べた愛。あらゆる幸・不幸、躁鬱の波を経て辿り着いた愛の叫びがここにはある。
事件に大きい、小さいもないように、愛に大きい、小さいもないのだ。馬鹿みたいに正論だけど、それを正面切って言えるのは難しい。そのあまりに真摯な姿勢にやっぱり僕は恥ずかしくてシニカルな皮肉のひとつをこぼしてみたりするのだけれど、中出しが最高だというのは僕も同意見だ。だから僕も愛を叫ぼう。「アイ・ラブ・ユー、生でやらせて」