DEEP BLUE

海に生きる

ディープ・ブルー スペシャル・エディション [DVD]
制作7年、ロケ地は200ヵ所、撮影フィルム7000時間という膨大な記録の中から、厳選に厳選を重ねた映像を集約した海洋ドキュメント。マイワシからシロナガスクジラ、更には深海生物まで含めた海のあらゆる生物の生きる姿を追っている。
ポイント以外は極力ナレーションを省き、あくまでも観測者であることに徹底した演出で、海に生きる者たちの姿を冷静且つ克明に捉えた映像と迫力はかなりの見物。実際、見てみるまでは途中で眠くなるんじゃないかと心配していたが、始まってしまえばあっという間の90分。大海原を生きる力強さと過酷で残酷な運命、そして生命の驚異を言葉ではなく映像でまざまざと見せつけてくれる。イルカとアホウドリの漁合戦に突然割って入る巨大なクジラ。極寒の吹雪に耐えながら卵を温める皇帝ペンギン。アザラシの子供を狩るシャチ。深海でネオンのように光る電気クラゲ。狩りに失敗するホッキョクグマ。シャチに襲われるコククジラの親子。壮絶なまでの生と死。貪欲なまでの生命に固執する姿。驚異的な躍動感。海という身近なフィールドにここまでエキサイティングなドラマが隠されていたことは単純に驚きだ。それほど海にもドキュメントにも興味がない人でも、いつの間にか引き寄せられてお腹いっぱいの満足感を得られるだけのクオリティを誇っている。作品の善し悪しではなく、これだけの時間と労力をかけたこの作品の記録そのものが重要だと思う。
ただ、ひとつだけケチをつけるのであれば、最後の最後(本当に最後)に「だから海を傷つけるのはやめましょう」というようなナレーションで自然保護を訴えたのはちょっと戴けなかった。先にも述べた通り、この作品はあくまでも観測者の視点で海のドラマをダイナミックに描いたものだ。感情的な部分を省くことで観るものはそこから色々なことを感じるし、学び取ることも出来る。大自然の驚異というのはそれだけで影響力が強いのだ。しかし、最後の最後で制作者側が結論を一方向に絞ってしまったため、それまで大海原と同じように無限のメッセージを含んでいた映画が、途端に一点に集約され、作品としての幅を失ってしまう。画竜点睛に欠くとはまさにこのことではないだろうか。自分たちの撮ってきた映像の力強さをもっと信じて欲しかったというのが正直な感想。とは言え、それでも作品そのものはかなりの出来なので、一度観てみることをオススメします。90分のエキサイティングな海の旅から、得られるものはきっと大きいはず。