Party People / 野宮真貴

Party People On The Piano!

PARTY PEOPLE
野宮真貴(ex ピチカート・ファイヴ)の5thアルバム。ファッション分野においても、音楽分野においてもパイオニアであり続ける彼女が今回挑んだのは、原点とも言うべき80年代。MTVの襲来により、洋楽も邦楽も分け隔て無くラジオやテレビから流れ続けるようになり、ディスコでは毎晩狂乱の宴が催され、所謂クラブパーティ文化が急速に浸透した時代だ。
原色のけばけばしい照明と、輝きながらくるくると回るミラーボール。バブルという熱に浮かされ、ただただ熱狂的に一日一日が過ぎていたあの頃の喧噪を現代に蘇らせるために集められたのは、m-floを始めとして、「Nekomimi Mode」が異様に話題になったことも記憶に新しいDimitri From Paris、最早説明不要の現代のカリスマとなった菊地成孔、タイ人+日本人+イギリス人+ 元Suedeのドラムという異色多国籍ユニットFuton等々、古今東西の生粋のパーティ・ピープルたち。粋を知り尽くした達人が投下していくアッパーなディスコチューンの極彩色&御機嫌トラックの上を、我らが野宮嬢のボーカルが軽やかに踊り抜けていく様はただただ華麗の一言だし、キュートでセクシーな歌声はフロア中のハートを射抜く矢に変わり、刺さったが最後、彼女の虜になる他ないほど魅惑的。更にはKISSの「I Was Made For Lovin' You」とt.A.T.u.の「Not Gonna Get Us」(!)のカヴァーも収録。濃い選曲をさらっと自分のものにしてしまう器用さとキャラクターの強さにも思わず脱帽してしまった。彼女の美しさと凛々しさは、言うまでもなく完全なる自己プロデュースと信念の上に成り立っており、それがアルバム毎に独特の世界観を作り上げてきたのだが、その徹底した"作り込み"が今作では完璧なまでのパーティ空間を演出することに成功している。退屈な四畳半をあっと言う間にクラブに塗り変えてしまう魔法。ディズニーより華やかで毒々しいエレクトリカル・パレード。野宮真貴は現代に降臨した美しき魔女以外の何者でもない。どこかほろりと来るような懐かしさと、時代のど真ん中をぶち抜くスマートな視点がバランス良く配置されたアルバムだと思う。