フォーガットン

え? これギャグなの? 本気なの?

フォーガットン [DVD]
飛行機事故で息子を失ったテリーは、その悲しみから逃れられずにいた。そんなある日、彼女を不思議な出来事が襲う。飾ってあった写真から息子の姿が消え、夫も「息子はいない」と言い出し始める。他の人に聞いても、皆口を揃えて彼女には息子は居ないと主張。焦ったテリーは自分の記憶を証明するために調べ出すが、新聞記事を遡っても飛行機事故の記事は何処にも見当たらず…果たして彼女の記憶は正しいのか?
このあらすじを聞いて誰がこんな話を想像するのだろうか(笑)。見る前まではサスペンスかスリラーかと思っていたが、そう思いこんでこの映画を観ると確実に予想が外れると言うことだけは断言出来る(それが良いか悪いかは人それぞれとして)。うん、まあ、ある意味ではサスペンスなんだけどさ。組織的な陰謀も出てくるし。だからと言って、どんでん返しが用意されているかと問われれば、そんなわけもなく。早い話が本格的なサスペンスやスリラーを期待していたら、内容が「トンデモ映画」でしたと言う、そう言う驚きです。ハイ。
で、そのトンデモ映画らしい馬鹿馬鹿しさに満ちていれば、もっと割り切って見れるんだけど、物語の進行は非常にトーンが低く、映像もかなり重厚な感じ。主演のジュリアン・ムーアも迫真の演技で見せてくれているのだが、そのどれもが真剣であればある程、全てが壮大なコントとしか思えなくなってくるのはどうしてだろう。とにかく、内容が凄い馬鹿なくせに、役者も演出もギャグやってるつもりじゃないというのがかなりキツイ。どうも本人達はこの映画が馬鹿だと言うことに気づいていない節がある。それでも後半はかなりの笑激映像が連発されるのだが、それすらも馬鹿だと思って撮ってないと思われる。みんな超真剣。真剣に馬鹿を作るのと、馬鹿と気づかずに超真剣にやっちゃう違いってかなり大きいと思う。何て言うんでしょう。後者の姿って切なすぎて教えてあげたいよね。「これは馬鹿なことなんだよ」って。
このストーリーは脚本家のジェラルド・ディペゴが実際に見た悪夢を下敷きにして書かれたらしいのだが(執筆時間は2時間らしい。リアルタイムで書きすぎ)、まあ、自分の見た悪夢の話って人が聞いたら純粋に馬鹿馬鹿しいよねという日常でのアレな脱力感をもの凄く感じさせてくれる作品です。なんか、歯に物が挟まったような言い方ですいません。ある一点を突けばかなり明確になるんだけど、ここは敢えて伏せておきます。あー、言いてぇー(笑)。
ひとつ言えるのは、どんなに面白いと思う夢を見ても、それをそのまま作品にしちゃいけないって事でしょうね。一度プロットに起こして、全体を客観的に見直して、何度も何度もスクラップ&ビルドして、製品になった脚本で映画を撮らないと。と言うか、この脚本に製作段階で何の突っ込みも入らずに公開まで至ってしまったというのもかなりの奇跡的な感じもしますけど。うーん、やっぱりトンデモ映画として確信犯的に作ったのかなぁ。その割には演出や役者の演技がもの凄い本格的なのが気になるところではあるんですけど。本気かギャグかがはっきりするだけでも随分と立ち位置が変わってくると思うし。まあ、どっちとも取れるところがまた味があって良かったりするんですけどね(笑)。