You Could Have It So Much Better / Franz Ferdinand

危険なダンスパーティへの誘い

You Could Have It So Much Better
ニューウェーブ風プラスティックサウンドを取り入れたケレン味たっぷりのメロディと甘いルックスでオーディエンスを魅了し、瞬く間に世界中でトップレベルの人気を獲得したFranz Ferdinand。2004年のフジロック・フェスティバルでは初登場であるにも関わらず、グリーン・ステージを大きく揺らし、11月の来日公演のチケットは秒殺完売。今回の来日公演はいきなり日本武道館と、デビュー2年目のバンドとしては破格な人気振りなのは、ここ日本だけを見てみても伺い知れるというものである。しかし、一躍登り詰めたバンドほど、セカンドアルバムの内容が問われてくる。ここ数年でもThe StrokesThe Musicといった粋の良い新人バンドは登場していたが、こぞってセカンドアルバムの出来がいまいちとなっており、シーン全体の盛り上がりが欠けていたことは事実。言葉にしなかったが、誰もが「そろそろ本物のロックバンドが登場しないものか」と心のどこかで思っていたのではないだろうか。そんな時に彗星の如く登場した彼ら。真価を問われるセカンドアルバムということで、プレッシャーも大きかったと思われるが、それを見事に跳ね返して確実にステップアップを見せた素晴らしい作品を送り出してくれた。
ギナジウムの少年達を思わせる優等生ファッション&サウンドだった前作と変わり、今回はスタジャン&ジーパンの不良ファッションで決め込んだ彼ら。音もぐっと太くなり、キャッチィさを増してダンサブルな仕上がり。急なリズムの転調が否応なく衝動を刺激して腰を振らせる、ツボを心得えた非常に"出来た"曲の構成(この辺が優等生だからこそ出来る上手さ)と深夜の秘密パーティにも似たケバケバしさといやらしさ(もちろんギナジウム特有のアレな淫靡感もたっぷり)。優等生が道を踏み外してアウトサイドに踏み込んだ時のタチの悪さがこのアルバムからはプンプン漂っている。危険な遊びを覚えていく彼らは非常に危うく、スリリング。ちょい悪不良に憧れる女性のハートを一発でノックアウトすること間違いない。「Do You Want To」はこの少し危険なダンスパーティへ誘う甘い囁きだ。一晩酔いしれるのも悪くない。