EP+C / BATTLES

紡ぎ上げられる極限

ep+c
元HELMET/現TOMAHAWKのJohn Stanier、元DON CABALLEROIan Williams、元LYNXのDave Konopka、そしてTyondai Braxtonの4人が織り成す、ニューヨーク発のインスト・バンド。昨年1月、THE MARS VOLTAのフロントアクトを務め、壮絶なライヴが話題を集めて一躍名を馳せたらしいが、残念ながら僕は知りませんでした。3ヶ月ほど前に友人の紹介で存在を知ってはいたものの、どういうわけか毎回購入を忘れていて、ようやくのことで今回購入。信頼出来る友人の紹介だったので、ある程度期待はしていたが、実際聴いてみると期待以上に良かった。
音と音の鍔迫り合いが生み出すバンドサウンドが、やがて壮大な絵図を描いていく様はキング・クリムゾンモグワイの方法論と同じものだが、基盤となっている音楽性がフリージャズや現代音楽などの実験要素を含めている点が実に面白い。スティーヴ・ライヒのような、同一のフレーズの反復から得られるトリップ感と高揚感、変則的なリズムから得られる奇妙な捻れ。そこにバンドとしての肉体性やダイナミズムが加わり、強烈な中毒性を引き起こす。アヴァンギャルドでありながら、それぞれのフレーズは実にキャッチィなもので、最初の一音から対象を一瞬で捉え、ゆっくりとしかし確実にクライマックスまでオーディエンスを誘っていく。タチが悪く、非常に甘美な毒と形容すると分かり易いかも知れない。頭でもなく、心でもなく、ダイレクトに肉体に訴えかける音。本能を掻き立てるこの興奮は元来ダンス・ミュージックとして生まれたロックの基本概念へと回帰する凄まじいまでの熱さを内包している。事実、この音を聴いてうちの猫が凶暴に走り回っているではないか。猫すらも踊らせるグルーヴ。恐ろしい。