Playing The Angel / Depeche Mode

孤高のエレポップ復活

プレイング・ジ・エンジェル
UKテクノシーン、エレポップムーブメントの中心的存在、Depeche Mode。95年にアラン・ワイルダーが脱退してから一時的なスランプに陥っていたものの、前作「Exciter」で見事に完全復活を遂げ200万枚のセールスを獲得。自分たちの持ち味である「エレポップ」という武器に立ち返ったサウンドメイキングで、再び世界を塗り替えた。結成25年周年を迎えた今年、4年振りの最新作をリリース。このまま熟年の技が生える燻し銀バンドとして落ち着くかと思われたが、それはとんでもない間違いだった。
プロデューサーにBlurの「Think Tank」を手掛けたベン・ヒラーを迎え、「次の四半世紀も彩ってやる!」と言わんばかりのアグレッシヴモード全開なキング・オブ・エレポップの連続爆撃。ダークで淫靡なサウンドから沸き上がる闇と痛みがメロディによって浄化されていく様は「救済」そのもの。「Playing The Angel」とは上手いタイトルをつけたものだ。どんよりと立ちこめたぶ厚い雲の向こうから、光を伴った天使達が舞い降りてくる姿がはっきりと見える。
思い返せば、今年は親爺達が凄い。New Orderのニューアルバムも捨て曲無しの完成度を誇っていたし、ポール・ウェラーも近年のまったり感を吹き飛ばすフルスロットルなアルバムを送り出してきた。The Rolling Stonesに至っては、スタイル自体がすっかり完成されすぎているにも関わらず、変わらずのエネルギーをこれでもかとぶつけて来ている。Oasisのニューアルバムは個人的には好みではなかったが、SUMMER SONICで見せた圧倒的な感動はやはり他の追従を許さないパワーに満ちあふれていた(Teenage Fanclubロディ・フレイムも泣ける程素晴らしかったし、何と言ってもThe La'sが最高だった)。何なんだ。最近のこの年寄り達の凄まじいまでの活気づき方は。へなちょこですぐに失速する新人バンドに対して、親爺達が一石投じて「何やってんだ、バカヤロー!」とキレているようにも見える。勢いやギミックに長けてはいるが、発展途上で試行錯誤の新人バンドに比べて、彼らは長年の経験で培ってきた、揺るがない信念を持っている。そこが強みだし、裏を返せばそこしか強みがないとも言えるが、心の強さは、そのまま音の強さにも繋がることは確かだ。どれだけ綺麗に器用にやろうとも、これだけは誤魔化しが利かない。迷いのない強さは、青さや若さを凌駕する。リスナーとしても「目新しさだけではなく、足元をしっかりと見ろ」と冷や水を浴びせられた気分だ。
Depeche Modeは再び世界に希望を与え、世界を煽る。神は信じないが、その崇高なまでの精神はとてつもなく美しく思う。誰も到達出来ない孤高のエレポップ。聖職者の旅は未だ終わらない。