I Bet You Look Good On the Dancefloor / Arctic Monkeys

たった一枚で全英を制圧したバンド

アイ・ベット・ユー・ルック・グッド・オン・ザ・ダンスフロア
デビューシングル「Five Minutes With Arcic Monkeys」で全英を湧かし、アルバムも発売していない段階でライヴのチケットは一ヶ月前には全てソールドアウト。火をつけたシングルも既に完売し、eBayで高騰するほど入手困難を極めている。「フランツ以上の衝撃!」「リバティーンズを超えた!」と空前絶後の賛辞と共に今や英国を席巻しまくっているバンド、それがこのArctic Monkeysだ。因みに入手困難となっているシングルの曲は現在ココで聴ける(期間限定)。初の来日公演もしっかりとソールドアウト。
一聴すれば、スモール・フェイシズやキンクスなどのモッズ・サウンドを彷彿とさせる所謂「古き良きUKリバイバルバンド」とも捉えられるが、彼らの場合はより現代的というか、より「ヤバい」のが魅力と言える。タイトなリズムと掻きむしられるギターが生み出す無駄を省いたサウンドは猛烈な青さを放っており、若さ故の衝動や反抗心をチラつかせているかと思えば、突然キレる。何の前触れもなしに、何の理由もなくキレる。そして、散々キレ倒した後、何事もなかったかのように平熱に戻る。終始暴走し続けている誰もが認める立派な不良がリバティーンズ、表では優等生、裏では小悪党がFranz Ferdinandならば、Arctic Monkeysは平均的な子供だ。だがその「平均」という一種の匿名性の中に、強烈な怒りを秘めているようにも見える。一番危険で、一番見つけにくい暴力性を持っている。しかし、その「瞬間的な暴力」とも言うべき瞬発力が見せるバンドとしてのダイナミックさはかなりのもの。一点に集中した有りとあらゆる感情が、サウンドを通して一気に膨張、破裂を起こし、凄まじいまでのエネルギーを放出する。たった一枚で多くの人の心に火をつけた理由はここにあるだろう。
爆発的な人気の中、シングル完売という飢餓感。このセカンドシングルの到着は飢えたライオンの檻に肉を放り込むようなものだろう(事実eBayでは発売前だというのに既に高値がついているらしい)。期待に応える如く、自分たちの王道(たったシングル一枚で既にArctic Monkeysサウンドを認知させているというのも凄い話だが)を押さえつつ、より激しく、より青く「若さ」を謳歌しまくったこの曲は世間の飢餓感に応えて、彼らを知る者も、今度こそは捉えると待ち望んでいる者も、未だ彼らを知らぬ者も、きっと満足させられるに違いない。デビューアルバムも熱狂的な支持によって受け入れられることも目に見えている。
ただ、こういったストレートでギミックのないバンドだけに、この直球さで長く勝負していけるかと考えると少し不安にもなる。火のつき方とまわり方があまりに早く、皆が皆、熱に浮かされて現状を見失っているだけに、その熱が冷めてしまったときが少し恐ろしく感じる。ハイブとなるか、本物となるか。デビューアルバム発売以降が、彼らの本当の勝負所となりそうだ。
オフィシャルサイトはコチラ。PVの試聴も出来るので気になった人はチェックを。