Feels / Animal Collective

醒めない夢

Feels (import)
ニューヨークのブルックリンを拠点として活動するAnimal Collectiveの5枚目となるニューアルバム。ニューヨークという一筋縄ではいかないバンドが多く輩出される街の出だけあって、彼らの音楽性を説明するのは非常に困難なのだが、ノー・ウェーブ、エクスペリメンタル、ブラジル・ミュージックをバックグラウンドに持っているのはほぼ間違いない(最近ではネオアシッドフォークと定義されていたりいなかったり)。複雑で、ともすればアヴァンギャルドな方向に行きがちな音楽性であるにも関わらず、全体的にはポップに仕上げる手腕も見事だが、その奇妙なサウンドから呼び起こされる独特のトリップ感にも定評があり、中毒患者となっているコア・ファンも少なくない。
前作「Tong Song」で初の本格ソング・アルバムを成功させた彼らが今回打ち出したのは、歌と音楽の融合とも言うべき、ビューがぐっと広くなった壮大な音世界。音の縦糸と歌の横糸が美しく絡まり合い、生み出されていくサウンドの絵織物とでも形容すればいいのか。音が駆け抜けるたびに浮かび上がる情景、歌がすり抜けるたびに押し寄せる感情。温かく、懐かしいその反面、もう二度と取り返せないような儚さを伴った刹那の美しさが、全編に渡って繰り広げられている。夢と現実の境界を曖昧にするメロディが、そっと囁いてはまた離れていく心地よさ。帰れない現実か、醒めない夢か。この音楽が空間を埋めてくれるなら、それすらどうとでも良いと思える。美しくも残酷な桃源郷だ。

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