PORTABLE DISCO / RAM RIDER

踊れる未来へ

PORTABLE DISCO
RAM RIDERのデビューアルバムが遂に発売になったのだが、レコードショップでジャケットを見て「やられた」と思った。帯に「踊れる未来へ」というキャッチコピーが書いてあったのだ。ちくしょう。すんげえいいキャッチコピーじゃないか。RAM RIDERと言えば、小数点二桁のスピードでハートを撃ち抜くキャッチーなメロディとバッキバキのビートで永遠のピークタイムを作り出す程のハッピーメイカーだが、まさかジャケットの帯の言葉にまでアゲられるとは思いもしなかった。

アルバムの内容はわざわざ説明するまでもなく最高だ。致死量のポップ・ミュージックとボーイ・ミーツ・ガールな胸キュンリリックが高濃度で交わって化学反応を起こし、スピーカーやヘッドフォンからどくどくと溢れ出ては、あっと言う間に現実をダンスフロアに塗り替える。RAM RIDERの詞の世界に共通しているのは、どれも内気な男の子がダンスミュージックを通して世界と向き合い、世界を肯定していく事だ。彼にとって、レコードもターン・テーブルも外の世界と触れあうためのツールであり、例えるなら魔法使いの杖の様な物なのだろう。音楽という名の魔法を使い、何でもない自分がフロアを支配する瞬間の何とも言えないあの喜び。モノクロームの日常を一瞬で吹き飛ばす興奮が彼のサウンドには詰まりまくっている。

何が良いことで何が悪いことかなんて、僕には分からないし定義するつもりもない。ただ、自分から世界を肯定していくことが、未来を切り拓くための第一歩なのだろうと思う。それがスポーツでも勉強でも仕事でもいい、ましてやダンスミュージックだったらこんなに素晴らしいことはないではないか。「踊れる未来へ」。ビジョンのない平和や後ろ向きな安息を歌われるよりも、僕の魂はこの言葉と音に揺さぶられまくる。さあ、レコードを回せ。世界はターン・テーブルの上にある。