Tip Taps Tip / HALCALI

現役ツンデレダンスビート

Tip Taps Tip
前作「音樂ノススメ」は非常に素晴らしい出来だったが、同時にギャル・ラップ・ユニットとしてやれることは全てやり尽くしてしまい、限界も感じさせたHALCALI。次は余程上手くやらないと延々と自分たちのスタイルをコピペして行く羽目になるのではないかと危惧していたが、ここに来てワンランク上の境地に軽やかにステップアップ出来たと言える。今回作曲を担当したのはYUKIの「JOY」にも関わっている田中ユウスケ。「JOY」の延長線上にある、包み込むような四つ打ちダンスビートにHALCALIの歌と連想ゲームの様な言葉遊びラップが重なり合い、イメージの世界を際限なく広げて行くビューの広さも見事だが、それ以上に功績として大きいのは今までのHALCALIになかった(もしくは意図的に隠していた)一面を覗かせることに成功している事だ。
HALCALIは今まで「今時な女子高生」像が強く、箸が転がっても爆笑するほどキャピキャピしているアグレッシヴな面が強く打ち出されていた。女子高生が街や学校で友達と連れだってはしゃいでいるあんな感じだ。ハルカとユカリの二人の持つ友達感覚が独自の脱力感と魅力を生み出していたことは確かだが、その一面を強調するあまり、ティーンズの女の子として当然持つ「恋愛」というトピック(この年頃には最重要)があまりクローズアップされていなかった。しかし今作ではどうだ。柔らかいビートと語りかけるようなメロディから、恋に浮かれて悩む普通の女の子の姿が見え隠れしているではないか。ティーンズ故の恋愛のもどかしさや甘酸っぱさ、未熟さや無鉄砲さ、それらを全て内包しつつも、その不器用さを「解いていくのが楽しいんだ」と現在進行形で享受していこうとするリリックには思わず胸キュンしてしまった。超可愛い。俺が兄なら嫁にやらん。
今時な生意気さをフィーチャーしつつも、時折見せる女の子らしさを加えることで、今までどうにも平面的だったHALCALIのイメージがぐっと立体的になっている。僕はこの曲を聴いて、とんでもないツンデレソングだと確信したんだ、姉さん(と、タイアップの「エウレカセブン」風にまとめてみる)。